弊社は、様々な起業の相談事を賜ります。M社長は長年、建築関係の仕事をされていました。50代になってから、自分が本当にやりたかったことは、現在の仕事ではなくて、子供の頃からの夢はスポーツでした。学生時代は、バドミントンを得意として、国体選手にもなったそうです。

50代を過ぎてから、子供の頃からの夢を叶えたくなり、現在のし仕事を辞めて、スポーツクラブを始めたいとの相談を受けました。子供たちの研修の場を提供して、将来のオリンピック選手を育てたいとのことでした。夢を追うことはとても素晴らしいと思います。弊社としても様々なお手伝いをさせて頂きました。まず、M社長のご要望は、体育館程度の室内競技できる建物が必要とのこと。バレーボールやバスケットボールができる位の施設を用意したいとのこと。でも、個人会社の資金で、最初から大型施設をオープンするためには、大きな費用がかかり、初期投資が経営の負担になるのではと懸念されます。もちろん、スポーツクラブの運営に施設があれば利用する会員様にはとても便利です。でも、初期費用が莫大になると、それを回収するまでに何名の会員様が入会して、何年で資金の回収ができるかをしっかり計算しないと、費用倒れになる可能性があります。

M社長がスポーツクラブを起業されたい、とのご相談を受けてから半年後、倉庫だった物件を賃貸で借り、フローリングなどをスポーツ仕様に変更し、事務所も併設しました。弊社としては、不動産業者や内装業者のご紹介をさせて頂き、広告や販売促進に関しては、看板のデザイン施工、ホームページ開設、パンフレット作成など、様々な点からサポートをさせて頂きました。設備投資や運転資金は、銀行からの融資を受けました。
スポーツクラブは、室内のリニューアルも完成し、オフィスも立派なものです。必要なパソコンや電話回線も引き、オープン準備がすべて整い、弊社も生花を持参してお祝いの訪問をさせて頂きました。ところが、オープンした施設に行くと、M社長だけが留守番をしています。
弊社:「オープンはいつからですか?」
M社長:「オープンしましたよ」
弊社:「会員様の募集はどんな方法をとるのでしょうか?」
M社長:「クラブの顧問である、有名な先生が来月に新聞に載る予定なので、その時にこのクラブのことも言ってくれるそうなので、そうしたら、会員はいっきに増えますよ」
弊社:「会員様募集に関しては、他には何かお考えは?」
M社長:「大丈夫! 」

こんな会話をしましたが、M社長はのんびりと構えられて、他の営業活動は全くお考えではありませんでした。それから、1か月後に訪問してみても、前回と全く同じ状況でした。それから更に半年後、そのスポーツクラブは、閉鎖しました。M社長には、借金が残り、担保だった自宅も手放しました。

閉鎖の要因を検討しました。
1. 初期投資に数千万円がかかり、その資金は、銀行融資に頼り、自己資金が不足していた。
2. 収入源である会員募集が出来なかった。
3. 経験不測の異業種への参入で予備知識が少なかった。
などが挙げられると思います。

では、どうすれば良かったのでしょうか。
1. 初期費用を抑える工夫ができたのではないか。
・公共の施設を借りる
・同好会のようなものからスタート
2. 会員募集の方法を広げる。
・地域住民への告知、案内書配布
・異業種企業との連携

長年の夢を実現したいとの夢を追うのは素晴らしいと思います。ただ、現実的には、大きな資金が必要になります。自己資金でできる範囲であれば、それが失敗しても振り出しに戻るだけですが、銀行融資を受けてスタートした場合、その代償は大きなものになる可能性もあります。
しっかりとした計画と市場調査が必要だと思います。